Seidu Ajanako

  Ghana National Team の選手.

  出逢った瞬間に惚れ込んだ.
   - 高さ
   - パワー
   - 瞬発力
   - バレーへの情熱
  どれをとっても他より抜きん出ていた.

  自分の心に響く.
  そういうプレーヤーに出逢うことは滅多にない.
  まだまだ荒削りながらも、「世界で通用する!」という直感を信じ、
  時間があれば900km離れた首都に足を運び、練習に顔を出した.
  他の選手同様、ボールへの諦めは早いし、言い訳は多い.
  それでも、自分よりも一つ年下だった彼に、ただ、夢を託す気持ちだった.
  根気強く、ひたすら精神論を語った.

   "言い訳は二流の選手のすること、背中で語れ"
   "バレーは独りで闘うものではない、仲間を信じろ"
   "No pain, no gain."
    etc...

  理想論を彼に念じ、押しつけ続けた2年間.
  自分がない才能を持つ彼が羨ましくも、妬ましくもあった.
  自分の果たせなかった夢を叶えることができる位置にいるのに、
  やろうとしない彼が歯がゆく、単純に、自分の気持ちをぶつけていただけだった.


  Ghanaを発って3年ほど経ったある日.
  Ethiopiaに居た私へ突然の国際電話.

   "Junko, I got a chance to go to US!
    You're my mental doctor.
    I'll keep your words."

  教え子からライバルへとなる知らせ.
  少し、夢に近づいた、という嬉しい気持ちと同時に、
  そこに立てない、という悔しくもある、なんとも言えない感情が自分の中にあった.
  ナショナルJr.女子チームを教えていた私は、負けていられない、と思った.

  誰よりもバレーで生活していきたいと願っていたSeidu.
  夢を叶えるのに必要な要素は生まれ待つ才能と弛まぬ努力、
  そして何があっても諦めない不屈の精神.


  Seiduは今、USAでの10年間のプレーヤーを経て、指導者としての道を歩み始めている.
  自分の力で、祖国Ghanaにユースチームを立ち上げ、同じ夢を目指す.
  ユーモアたっぷりで精神的にも強くなった彼はきっといい指導者になるだろう.
  いつの日か、All African Gameでお互いのチームを率いて戦う.
  また一つ、彼の地に戻る理由ができた.