運命の出逢い

  それまで、自分が少しだけ優位に立てる場所で、
  自分が一番、みたいな顔をして立ち振る舞い、満足していた.
  そんな自分に空しくなった時に、ふと目にしたのが、

  ~エチオピアバレーボール連盟配属、ナショナルチームコーチ~

  の募集.
  後で知ったのだけれど、要請内容は男子ナショナルチームの育成だった故に、
  選考の際には女性の私を合格させるか、一悶着あったそう.

  相手が私に掛けてくれ、手にすることができたチャンス.
  この博打の様な決断は私に素敵な出逢いをもたらしてくれた.

  Ethiopia渡航時の自分の目標は『許容』.
  完璧主義者はパーフェクトの結論にしか納得がいかない.
  勝負の世界から普通の社会に身を置く経験を経て、ようやく、
  世の中の当たり前な曖昧さに気付くことができ、その事実に戸惑い、狼狽えた.
  それまでの自分の中には存在しなかった、グレーの部分である1から99が、
  実は普遍的なものである、という事実に慣れはしないものの、受け入れようともがいていた.

  自分の中でグレーゾーンをどう消化すればいいのか分からないまま、
  Ethiopiaへの赴任が決まった時に、ふわっと、この『許容』という目標が浮かびあがった.

  自分に奢らず、相手を許容し、指導者という立場を崩さず、学ぶ.

  Abebeとの出逢いがなければ、目標が目標のまま終わった10ヵ月間になっていたに違いない.
  人や物事を許容することをAbebeとの出逢いが教えてくれ、
  更には自分のバレー観が広く、そして深いものになった.
  彼との出逢いは、私の運命を変えるそのものだった.