北原 勉

  エチオピアバレーボール連盟に所属していた時の後任.
  そして、私の任期延長に伴い同僚、否、戦友となった同志.
  Ethiopiaで共にした時間は僅か8ヶ月だったけれど、
  彼もまた、出逢いからの長さよりも深さが勝る人.

  とは言うものの、未だ見ぬ時は不安だった.
  彼はバレースタイルが違うライバル校出身.
  大学時代にはお互いに常に意識するチーム.
  けれど、コートに立った瞬間、そんな憂慮は吹っ飛んだ.
  押し付けがましいくらいに熱い、バレーに対する情熱に圧倒された.
  自分もそこそこ熱い人間だとは思っていたけれど、北原勉のそれはホンモノ.

  一年かけて基盤を作った愛着のあるチームをすんなりと彼に任せることができたのは、
  技術以上に、根っこにあるバレー観が同じだったから.
  スポーツで最も大切にしたいことは、人間力.
  その部分が同じだったと感じたからこそ、
  自分よりも遥かに技術指導に優れている彼にチームを引き渡せた.
  他の人だったら、こうはいかなかったと思う.
  地方巡回に専念できることになった私にとって、
  アジスに戻る度に見紛う程に成長するチームとの再会が楽しみになった.
  モチロン、悔しさも伴って.


  いつだって本当に大切なことはコトバでは伝えてくれない.
  「そこは言葉にしなくても分かってくれるでしょ」と心で語り掛けてくる.
  そんな感じの人だから、Ethiopiaを去ってからの再会も気まぐれ.
  でも、どんなに時を経ても熱く語らえるのは、
  自分の身が何処にあろうともその先に求める姿勢が同じだから.


  彼は今、新設チームの監督として采配を振るう.
  全国にファンを抱える全ての環境が整っている老舗チームから、
  地域の人々を巻き込みながら、環境造りにも関わらざるを得ない生まれたてのチームへ.
  これまでのようにはサクサクと進まない路は、協力隊で培った経験で乗り越えられるはず.
  チャレンジし続ける背中をいつまでも押し、応援したい.

  負けず嫌いの私は、彼の存在がある限り、頑張らないと、と、勝手に活力を得る.
  人に活かされ、生きている私にとって、
  北原勉もまた、大切な存在.
  いつだって全力疾走している人だから、なかなか捕まえるのが大変だけれど、
  再会の度に偉そうにモノ申せる程度の自分流の人生を踏みしめていたいな、と思う.


  くまちゃん.
  貴男みたいに頑張る人は見たことがないけれど、もっと、もっと、頑張れ.
  選手は頑張る貴男を見て、やるしかないから.
  そして、頑張る選手を見て、貴男もやるしかないから.