繋ぎとめるもの


  靄が晴れた、たった一言.
  最近、一緒にコートに立つ機会の多い、
  リハビリがてら練習に顔を出す選手から.

  「今日はあのクイックがドンピシャだったんで、満足ッス.」
  「そっかぁ、良かった~」と、返しながら、
  こそばゆい様な、なんとなくしっくりこないような、
  でも、久々に清々しい気持ちになれた.

  まだまだ、そこまで理解してのトスは上げられていない.
  ドンピシャって、一方的に感じるのではなく、
  双方が同じ想いを共有できたときにうまれる.
  私にとっての"ドンピシャ"はあんなものではないし、
  彼にはモノ申したい事はたくさん.
  それでも、口に出して伝えることができるのは、素敵なことだし、
  その気持ちを思い出させてくれたことに、感謝.


  チーム全体のドンピシャ.
  一本いっぽんを丁寧に考えながらボールに触れていれば、そこに繋がる.
  一本目があって、アシストのトスがあって、
  最後に点に直接に絡むスパイカー.

  打ち手としてまともにバレーをしたことない自分には、
  スパイカーのポジションの重圧は計り知れない.
  常に、仲間の想いを一手に引き受ける役割.
  セッターは、想いを託され繰り出された一本に、
  自分の想いも重ね、スパイカーに託す.
  ボールを介して心を分かち合い、次への心を紡いでいく.
  一球入魂の真髄.

  繋ぎとめてくれるものは、そこまでの想いとそこから放たれるボールのゆくえ.